用語集#

ブロッキング Blocking#

免疫染色の手順において、染色前に正常血清、ゼラチン、アルブミンなどの物質を添加してサンプル内の非特異的結合部位を占有する作業。これにより、一次抗体または二次抗体の非特異的結合を最小限に抑えることができる。

デコンボリューション Deconvolution#

光路の既知の光学特性を利用して、カメラに到達した画素の輝度値を発光源の構造に「再割り当て」することで、顕微鏡画像からボケを計算処理により除去する処理。

生体外イメージング Ex-Vivo imaging#

外部の制御可能な環境(例:ペトリ皿上の組織外植片)において、生きた動物組織を対象に行うイメージングのこと。動物体内では撮影が困難な生体組織を高解像度で観察することが可能である。灌流ポンプとマイクロ流路を用いて酸素化(95%酸素・5%CO2)され、温度制御された培地を用いることで、組織はイメージングシステム上で生存状態に維持される。

Fiji#

Fijiは”Fiji Is Just ImageJ"の略。ImageJ2に多数の一般的なプラグインを加えた汎用画像解析ソフトフェア。

固定 Fixation#

試料内の細胞・分子成分を安定化させると同時に、生物学的機能を停止させる処理。使用する固定剤(例:パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタノール)、濃度、および処理条件(例:緩衝液、温度)によって、細胞や分子構造の保存状態が決まる。観察対象のサンプルや構造に応じて最適化が必要である。

画像処理 Image processing#

画像処理は、画像に対して実行され、別の画像を生成する操作のこと。画像処理には、単純なもの(サイズ変更や回転など)もあれば、高度なもの(円や線など画像の特定の特徴を強調するなど)もある。

浸液 Immersion media#

浸液は、対物レンズとカバーガラスまたは試料の間を満たす媒質のこと。対物レンズの開口数 NAに\(NA=RI * sin(θ)\)の形で影響し、横方向および軸方向の分解能に関わる。収差を最小限に抑えて画質を向上させるためには、浸液の屈折率 RI は封入剤の屈折率に合わせることが重要である。浸液には、空気、水、シリコーンオイル、グリセロール、オイルなどが用いられる。

免疫標識 Immunolabeling#

固定サンプルに対して最も広く用いられる標識技術のひとつ。蛍光標識された一次抗体を用いて目的タンパク質を検出する方法と、一次抗体と蛍光標識二次抗体を組み合わせた二段階標識法がある。二段階標識を用いると、シグナルの増幅が期待できる。免疫標識の主な課題は抗体のサイズであり、十分な透過処理が必要である。重鎖のみからなるナノボディは通常の抗体より大幅に小さく、代替手段として有効である。

生体内イメージング Intravital imaging#

臓器を取り出したり、サンプルを固定したりすることなく、生きた動物の体内における細胞構造や生物学的プロセスをリアルタイムで観察するイメージング法。一般的に、多光子顕微鏡などの光透過性に優れた特殊な機器や手法が必要であり、光学窓などを通じて特定の臓器にアクセスできることが前提となる。生体内イメージングは生命倫理委員会の監督下に置かれ、IACUCおよびその他の機関委員会の承認が必要である。

封入剤 Mounting media#

試料を封入(マウント)する溶液。pH緩衝作用、サンプル全体の屈折率の均一化(理想的にはガラスの屈折率への適合)、および光退色の抑制(媒質の種類による)によって、蛍光体を含むサンプルを保存しながら取得時の画質を向上させる。また、サンプルの乾燥を防ぎ、長期保存を可能にする。

オブジェクト検出 Object detection#

画像内のオブジェクトを検出するための画像処理技術である。オブジェクトのマスクは得られないかわりに、オブジェクトのバウンディングボックスやx・y座標を出力できる。

脱酸素剤 Oxygen scavengers#

酸素は有機色素やその他の蛍光体の光退色を引き起こす傾向がある。グルコースオキシダーゼやピラノース2-オキシダーゼなどの脱酸素剤をイメージング培地に添加することで、蛍光体の光褪色を大幅に低減できる。ただし、脱酸素剤はサンプル内のATPおよび酸素レベルに影響を与え、細胞の健全性や生物学的機能を損なう可能性があるため、ライブセルイメージングへの使用には注意が必要である。

透過処理 Permeabilization#

免疫染色に用いる抗体やその他の蛍光体を細胞や組織内の抗原に到達・結合させるために、弱い界面活性剤によって膜完全性を損なう(孔を形成する)処理。透過処理は細胞質の喪失やシグナルの劣化を招く可能性があるため、目的の抗原に応じて慎重に最適化する必要がある。

屈折率 Refractive index#

特定の媒質中を光がどのように伝播するかを表す指標。対物レンズの開口数を計算する上で重要な値であり、画質を向上させるためには、試料(封入剤)、カバーガラス、および浸漬媒質間の屈折率の不一致を最小限に抑えることが望ましい。屈折率のインタラクティブなデモはMicroscopyUで参照できる。MicroscopyUで屈折率のインタラクティブデモを見る

ROI#

関心領域。画像内の気になる領域のこと(組織内の領域、細胞、腫瘍など)。

セグメンテーション Segmentation#

画像を複数の部分または領域に分割する手法。セグメンテーションには以下の3種類がある。

  • セマンティック("意味的な")セグメンテーション semantic segmentation とは、画像のすべての部分があるクラスに属するというもので、細胞生物学では、画像を細胞とそれ以外の領域に分割するのが一般的である。

  • インスタンス(”物体ごとの”)セグメンテーション instance segmentation では、はオブジェクト単位のセグメンテーションであり、細胞の存在領域を検出するだけでなく、各細胞を個別のオブジェクトとして分割する。

  • パノプティック("総括的な")セグメンテーションは、上記2つを組み合わせた手法であり、オブジェクトを識別しながら分類も行う。生物学的な例としては、画像内のすべての細胞を検出し、分裂中か否かに分類することが挙げられる。

閾値処理 Thresholding#

最も単純な画像セグメンテーションの手法であり、画像を背景と前景(またはシグナル)の2つに分割する。通常、背景画素の値を0、前景画素の値を1とする二値画像を生成する。

組織透明化 Tissue clearing#

試料全体の屈折率を均一化することで組織内の不均一性を低減する手法。組織片の全厚にわたる蛍光イメージングは、組織内の屈折率の不均一性による光の吸収と散乱のために非常に困難であり、光透過性が著しく低い。さらに、試料の様々な部位から発生する光が蛍光のボケの原因となり、任意の焦点面におけるコントラストと分解能を大幅に低下させる。そのため、薄い二次元断面から細胞成分の空間分布や相互関係に関する情報を取得したい場合は通常、組織切片化を用いる。しかし、臓器などの複雑な生体系における構成要素の多くは2次元断面内に収まらないため、細胞成分間の空間的関係の理解が制限される。組織透明化により光が組織を透過できるようになると、試料を物理的に切片化することなく、共焦点顕微鏡などの一般的な顕微鏡技術を用いて臓器や組織全体の高解像度・立体的なイメージングが可能となる。

組織切片化 Tissue sectioning#

厚い組織をさまざまな厚さのスライスに切断する処理のこと。厚い検体内では組織内の屈折率がさまざまに異なっており、光透過性と蛍光イメージングに悪影響を及ぼす。組織切片化により薄いスライスを作成することで、組織のイメージングが用意になる。多くの場合、サンプルは固定されてパラフィンに包埋されるか、組織凍結媒質で凍結された後、クライオスタット、ミクロトーム、バイブラトームなどの装置によって薄いスライスに切断され、チューブやスライドガラス上に収集される。